仏像を見てみると背中に何か輪のようなものがあります。これは一体何を表しているのでしょうか。どういう意味があるのでしょうか。
この仏像の背中の輪のようなものは光背(こうはい)と呼ばれ、「後光が指す」と一般的にいわれるように、後光の方がよく知られています。これは三十二相(さんじゅうにそう)といって、それは人間の姿でありながらそれを超越した如来の外見の特徴のことでありますが、その中の一つである「丈光相(じょうこうそう)」というのは体から光を発している相であり、それから生み出されたのが光背(こうはい)です。もし背中から光が指している人を目にすると、まぶしくて見ても長い時間目を開けれないでしょう。それだけありがたい存在であることを表しています。信者にとっては仏様は尊い存在で、ありがたく目を開けれていられないほどまばゆいものだと思われます。
光背(こうはい)のデザインはさまざまで、その形からどのような種類の仏像かを特定することは、種類が多すぎて難しいのですが、大きくは頭光(ずこう)と挙身光(きょしんこう)に分けることが出来ます。頭光(ずこう)は仏像の頭部から光が出ているようにみせる光背(こうはい)で、挙身光(きょしんこう)は体全体から光が出ているようにみせる光背(こうはい)です。光が放たれる様子は、円や放射状の線で表されることが多く、光を円で表した円光(えんこう)、それを組み合わせた二重円相光(にじゅうえんそうこう)、阿弥陀如来によく見られる放射光背(ほうしゃこうはい)、如意宝珠をかたどった宝珠光背(ほうしゅこうはい)、炎の形をした火焔光(かえんこう)などがあります。
光背(こうはい)には、雲や蓮華などの植物や火焔、化仏などを浮彫りや透かし彫りでデザインしたものなどで技巧を凝らしたものが多いです。また時代や場所、仏像の種類などによってもそのデザインがさまざまに変わります。仏像のバックとして美しい情景をつくりだし、一層美化しようとした多くの仏師の表現もさまざまなようです。
明王や天部は火焔をかたどった火焔光(かえんこう)を背負います。火焔光(かえんこう)は怒りを炎で表現したものですが、不動明王像の光背(こうはい)では、しばしば炎の先端が鳥の頭の形をした迦楼羅焔光(かるらえんこう)も見られます。迦楼羅(かるら)は伝説上の巨鳥のガルーダのことで、インドネシアのガルーダ航空のガルーダはこの迦楼羅(かるら)からきているようです。迦楼羅(かるら)は煩悩の象徴である毒蛇を食べると考えられています。不動明王の智恵の炎は煩悩を焼き尽くすという事を示すために、この鳥の姿を火焔に表すという伝があります。