仏教で用いられるあらゆる道具を仏具あるいは法具とよびます。仏堂にも仏前に荘厳・供養具として置かれている三具足(みつぐそく)(香炉、燭台、華瓶)は仏具の基本であります。その内容をそれぞれ見ていきましょう。
燭台は、灯明をお供えする台のことで、お香や花やお菓子などと共に仏様や、仏壇に供えられます。仏様にお供えすることは智慧を増長する功徳があるとされています。何故なら光が闇を照らし、真実の姿を映すように、仏の智慧も無明(迷いの根本であり煩悩の根源)を照らして真実の姿を映すからです。
従いまして、灯明は智慧を象徴するものです。仏法の伝統を法灯ともいい、師から弟子に教えを伝えるのを伝灯といいます。貧者の一灯(ひんじゃのいっとう)とは、阿闍世王授決経(あじゃせおうじゅけつきょう)や賢愚経(けんぐきょう)に信心深い貧しい女が仏に心を込めて献じた一灯だけは王が供えた多数の灯りが消えても消えなかったとしてまごころの大切さを説くとある話に基づいた句です。
香炉は香を薫ずるための供養具です。
日本にお香が伝来したのは仏教が伝来の頃で、538年(別説あり)頃と言われています。仏教儀礼とともにお香もまた大陸から伝わりました。
奈良時代の頃は仏前を浄め、邪気を払うために用いられました。その当時は主に宗教的な扱いでした。その後、平安時代には仏の為の供養だけでなく、日常生活の中でも香りを楽しむようになりました。そして貴族たちの間で、薫物(たきもの)といって香料を練り合わせたお香をたいて、その香烟を衣服,頭髪,部屋などにしみこませ、その移り香を楽しみました。鎌倉時代には香木の香りを鑑賞する聞香(もんこう)の方法が確立されました。江戸時代には中国からお線香の製造技術が伝わり、庶民のあいだにもお線香の使用が浸透していきます。
お香は花と共に古くから仏の供養に欠かせないものです。のちに一般に広まって、死者の供養にも用いられるようになりました。
華瓶(けびょう)とは花を挿す瓶のことで、花を供えることは、仏様を敬うという心に発しています。
美しい花を供えるのは自然な供養でありますが、毒のある花やトゲのある花、悪臭を出す花などは避けるようにします。そしてつねに生き生きとした新鮮な花を供えるのが良いでしょう。花を供えるときは、花の表側を礼拝する人の方に向けます。これは対面した方が、この花によって清らかになるという意味を表しているとされます。
この三具足(みつぐそく)(香炉、燭台、華瓶)が、最少の供養物であり、在家の仏壇の基本となります。並べ方としては、向かって右にロウソク立てを置き、中央に香炉、左に華瓶(けびょう)を配置します。他にも五具足(いつぐそく)は両端に燭台その内側に華瓶、真ん中に香炉がきます。