イメージとは逆に仏像によっては宝冠を身に付けております。宝冠を身に付ける方というとどのような方のイメージがあるでしょうか。
宝冠を権力者が権威の象徴として頭の上に冠をかぶることは、古くから世界中で行われてきました。どのような仏像が宝冠を身に付けているのか探ってみたいと思います。
仏像は大きく分けて「如来」「菩薩」「明王」「天」という「四大種別」と「羅漢(仏弟子と高僧)」に分けられます。
宝冠は基本的に菩薩が身につけておられます。それはなぜでしょうか。
菩薩とはもともとお釈迦様の修行時代の呼び名で、正しくは菩提薩た(ぼさいさった)といいます。菩提は「悟り」、薩たは「衆生」の意味で、悟りを求める衆生というのが原義です。
すでに如来になる力があるのに、あえてならずに衆生の近くで働き、如来の補佐役を務め、有能なアシスタントとして活躍します。釈迦三尊や、阿弥陀三尊など二菩薩が如来に従います。
お姿としては成道前のお釈迦様の王子時代をモデルとするため、古代インド時代のファッションが元になっているので、装飾品を多く身につけ、裳というスカートのような衣類を着ています。胸飾りや、宝冠、上腕にはめた臂釧(ひせん)、前腕の腕釧(わんせん)、イヤリングに相当する耳環(じかん)などで飾ります。如来とは違いとてもきらびやかなお姿をされているのが特徴です。
頭部の飾りを総称して宝冠としていますが、その形状は様々です。王冠から髪飾りまで様々あります。仏像では本体と同じ材質で造られたり、別材(銅板に鍍金)で造られたりします。金銅仏は宝石等が象嵌されていたりします。
大日如来は例外として菩薩のお姿をしていますが、五智宝冠を頂きに身に付けております。五智宝冠とは宝冠の中に五智如来の化仏を安じた宝冠です。密教の潅頂(かんじょう)の儀式では、師が弟子に宝冠を被せ、それを鏡に写し出してみせることによって、自らが大日如来となったことを知らしめる作法があります。五枚の銅板に打ち出しと彫刻で金剛界五仏を表わしてさらに鍍金を施し、冠形に仕上げています。潅頂用(かんじょうよう)の五智宝冠は、紙で作り、彩色で五仏を描いた簡略なものも多くあります。
五仏とは(大日如来・阿しゅく如来・宝生如来・阿弥陀如来・不空成就如来)の智慧を表す五智は(法界体性智・大圓鏡智・平等性智・妙観察智・成所作智)(ほうかいたいしょうち・だいえんきょうち・びょうどうさっち・じょうそさち)で、五仏は曼荼羅の世界におけるその他のすべての諸尊の根本の尊格でもあります。そして五仏のうちの四仏は、大日如来の総徳を分ち、大日如来一尊より顕現したものです。従いまして大日如来の内証の知恵である法界体性智は、その徳を開けば四仏、四智となります。
大日如来の法界体性智を開いたものが大圓鏡智以下四智であるので、五智といっても法界体性智に帰一することになります。
宝冠は基本的に菩薩が身に付けておりますが、大日如来は例外として菩薩のお姿をしているので宝冠を身に付けています。
宝冠は、古代インドの王族が着用した宝石と貴金属でつくられた装飾品でありましたが、仏教では菩薩のお姿を荘厳し供養するために用いられます。