仏像は様々な素材で造られますが、石の固く丈夫なところから彫像を永遠に残そうとして金銅仏と共に早くから素材として選ばれました。日本では森林素材に恵まれていた理由から木彫仏が多く、石造仏が主流を占めることはありませんでした。
仏像の故郷であるインドではそれらの現存するほとんどの仏像が石彫像です。
仏像は、はじめギリシアの神像にならって、現パキスタン領のガンダーラ地方で紀元一世紀頃にヘレニズムとイラン文化の影響の強い釈迦像が、仏伝図中の一登場人物としてあらわされました。
初めは釈迦像だけが特別大きく描かれてはいませんでしたが、やがて礼拝の対象としてふさわしい正面向きで立像、あるいは坐像の独立像に発展していきました。この仏教美術はパキスタン北西部を中心としていたので、この地域の古い名前にちなんで「ガンダーラ美術」といいます。
ガンダーラで仏像彫刻が造られ始めたのと同時期に、インド中央部のマトゥラーでも仏像が造られ始めました。この「マトゥラー仏」は「ガンダーラ仏」とは違い、インド文化のなかで生まれました。
仏像の表現は制作された時代・地域・仏師によって違いがあり、その材質や技法も多彩でありますが、「ガンダーラ仏」がその風貌や衣の表現にギリシア彫刻の影響を強く見せるのに対して、「マトゥラー仏」では風貌も純インド的で体つきもたくましい姿でガンダーラの仏陀像とは対照的な作風を示しています。
石仏は切石を用いて彫刻を行う独立像と自然の岩山に直接に彫る磨崖仏(まがいぶつ)の二つに大別できます。
磨崖仏(まがいぶつ)は非常に大きいものがあり、移動することができません。山の中での造像が多いので修験道や特殊な信仰との結び付きが深いです。数世代に渡って彫刻されることもあるようです。石像は非常に重量があるので、独立像の場合は台座は別に造られることが多いです。寺院などの境内には石像が祀られていることが多くあります。
彫刻技法としては石ノミ(たがね)と金槌で石の表面を丸掘りする方法、岩壁などを彫る浮き彫りや、線刻彫りの技法などあります。
地蔵菩薩(お地蔵さん)の像は全国各地で見られますが、日本では作例が多いです。馬頭観音は路傍に置かれる石仏(観音像)で最もよく見られます。
石仏は日本では木彫仏ほどメジャーではありませんが、仏像の故郷であるインドではそれらの現存するほとんどの仏像が石彫像です。
初期の仏像であるガンダーラ仏やマトゥラー仏は石仏であり、地蔵菩薩や馬頭観音は道端でよく見かけることができます。磨崖仏は非常に大きいものが多く、その大きさには信仰の深さを感じるような気がします。
少し足をのばして磨崖仏を身に山中などに仏像鑑賞に行っていただければと思います。