
寺院にお参りすると僧侶や信者の方々が真剣にお経をお唱えしているのが耳にします。 またお葬式や法事に参列するとお経が聞こえてきます。私たちの生活に溶け込んでおりますお経ですが、では仏教のお経とは一体何なのでしょうか?いつ、どこで出来上がったのでしょう。 また日本には色々な仏教宗派がありますが、それぞれ違うお経を唱えているように思います。
そもそも「経」とは原語で「スートラ」といい、糸やひもを意味します。古代インドでは学術や祭式を短い文章にまとめられていたものを指しましたが、後に仏教の文献にも、この呼称が採用されました。
お経とは一体何か。これを一言でいえば、「仏の説いた教えが書いてあるもの」といえます。
もちろん仏とはお釈迦様のことですが、お釈迦様自身はお経を書いておりません。お釈迦様は35歳で悟りを開かれてから、80歳で入滅(亡くなられる意)されるまでの間の約45年間、インド各地を歩いて人々に教えを説いていきました。 その時に様々な場所で人々に説かれた教えが後にお経となりました。
それではどのようにお経となっていったのでしょうか。お釈迦様が亡くなられた後に、弟子たちは口伝えに弟子から弟子へと伝えていきました。 しかし伝言ゲームのように内容が変わって伝わってしまうのを防ぐため、お釈迦様の教えを正しく伝える必要があるために、経典の編纂会議を行いました。
これを結集(けつじゅう)といい、第一結集はお釈迦様の死後の翌年に教団の長老たちが集まりました。ラージャグリハ(王舎城郊外)に500人の比丘(阿羅漢)達=五百羅漢(ごひゃくらかん)が集まり、最初の結集が開かれました。 その後百年後に第二結集(だいにけつじゅう)、さらに百年後のアショーカ王の時代に第三結集(だいさんけつじゅう)が行なわれました。
このお経の内容を三つに分けると三蔵(さんぞう)といって、1. 経(きょう)、2. 律(りつ)、3. 論(ろん)といいます。 経蔵(きょうぞう)とは仏の真理を説いたもので、お釈迦様の教えをまとめたものです。 律蔵(りつぞう)とは修行僧として守るべき道徳・生活様相などのルール、すなわち戒律を説いたものです。 論蔵(ろんぞう)とは経・律に対する解釈や注釈書であります。 蔵(ぞう)とは入れ物のことなので、経(きょう)・律(りつ)・論(ろん)を入れておく入れ物という意味です。
西暦紀元前後の頃から北伝仏教(ほくでんぶっきょう)が起こりました。これは大乗仏教ともいい、多くの大乗経典がつくられるようになりました。 大乗仏教に対して上座部仏教(じょうざぶぶっきょう)のことを小乗仏教ともいいますが、小乗とは大乗仏教からの蔑称(べっしょう)です。
お経は内容を三つに分けることができ、経蔵(きょうぞう)、律蔵(りつぞう)、論蔵(ろんぞう)といい、これらを三蔵(さんぞう)といいます。
お経の数は、八万四千の法門(はちまんしせんのほうもん)と言われるように膨大な数があります。その理由としては、仏教の究極的なゴールは解脱(げだつ)であり、成仏することで、様々な人々を悟りの世界に行っていただくために、多くの種類の道を示したということが出来ます。